“孤高の緊縛師”こと明智伝鬼氏が鬼籍に入ったのは既に2ヶ月近く前のことだ。
その死より49日を迎える9月6日に追悼式と偲ぶ会が、都内各所で行われた。
当日は、まるで彼の死を嘆き悲しむ参加者の心をそのまま空模様にしたような、雨であった。
生前、緊縛師の先駆けとして、或は、池袋SM倶楽部、雅羅紗のプロデューサーとして、
はたまた数々のビデオにも携わり、今日のSM業界の、まさに礎を築き上げてきた明智伝鬼その人。
追悼式は、東京都新宿区の東京厚生年金会館にて行われた。
受付では、彼の象徴ともいえる「縄」が配布されていた。
献花ならぬ「献縄」、という趣なのだろう、参列者の各々がその縄を受け取る光景を見て、そして、
自らもその縄を受けとり、故人に対する思いが強烈に込み上げてきた。
式が始まり、今回の追悼式の発起人である団鬼六氏、高須基仁氏、桜田伝次郎氏らによってそれぞれの
追辞が述べられ、各氏と彼との馴れ初めやエピソード等を聞くことができた。
そして、生前残してきた数々の作品がスクリーンで上映される。
各々が「別れ」を惜しむかのようにスクリーンに見入っていた。
最後に、彼の遺影に麻縄をたむけ、式は厳かに終了した。
会場は移り、生前、明智氏も幾多のイベントに参加していたというロフトプラスワンへ。「偲ぶ会」と称されたトークイベントである。
追悼式の厳粛な雰囲気から一変し、トークイベントは終始和やかに行われた。
生前、故人と親交のあった桜田伝次郎氏、以前、
故人の弟子であった明智蕾火氏、竜崎飛鳥氏、朝倉雅女王様などによって、故人との馴れ初めや、故人の愉快なエピソード等が語られた。
氏を語るそれぞれが、目を輝かせ、嬉々として氏との過去を回想しているその様からも、
明智伝鬼という緊縛師の技術、完成度の高さ、人柄の良さなどを伺い知る事ができた。
そして、ここでもまたいくつかの作品が上映され、改めて氏の偉大さを目の当たりにし、
我々は、「とんでもない男が死んでしまった」などと、
再び感傷に浸ったのである。
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あとがき
幼少の頃より受けた衝撃、衝動で駆け抜けた彼の緊縛人生。
緊縛という道を選び、歩み、数々の偉業を成し遂げたその人生を、
我々は、安直に「尊敬」という言葉で片付けようとしていた。
公式サイトによると、正式な彼の後継者は、いないようだ。
どうだろう、いつまでも死を悲しむ時間が、果たして我々にはあるのだろうか?
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明智伝鬼先生のご冥福を心よりお祈りいたします。 |
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